
お年よりの骨折とその治療法
1大腿骨頸部骨折(図1)
太腿のつけ根近く、すなわち大腿骨頭の下の細くなっている部分(大腿骨頸部)の骨折です。関節の袋の内側の骨折ですので、よく頸部内側骨折とよばれます。転んで発生します。
この部分の骨折は、骨がつきにくいこと、たとえ骨がついても骨頭への血液循環が骨折で障害されていて、やがて骨えし頭がくずれてくること(骨頭壊死)が少なくありません。
そこで、お年よりでは骨をつける努力を最初からあきらめて、人工の骨頭に換えてしまう手術(人工骨頭置換術)がよく行われます。もちろん、術前に全身状態のチェックが必要です。
手術後1週間で歩行訓練が開始されますが、お年よりでは松葉杖を使えないことが多く、この場合には歩行器を使います。
お年よりは筋力が弱いため、人工骨頭が脱臼しやすいので注意しなければなりません。90度以上に股関節を曲げてはいけません。とくに、内股気味に曲げると脱臼しやすいものです。したがって、手術後3ヵ月間は、和式トイレの使用、お風呂の湯舟にしゃがむことや正座は控える必要があります。
車椅子に乗り移る際の介助もそっとしてあげることが大切です。股を開き気味の状態で乗り移るのが安全です。
人工骨頭の利点はなんといっても、すぐに歩行を開始できることです。とくに、お年よりは長く寝たままでは肺炎を併発しやすく、命にかかわる危険があります。このような合併症がおこらなくても、寝ている間に筋力が弱くなったり、ぼけの症状が進行して寝たきりになりかねませんので、この骨折では人工骨頭手術が有力な治療法といえましょう。
図1大腿骨頸部部骨折(左)と人工骨頭置換術(右)

前ページ 目次へ 次ページ
|

|